WB化石生物研究会のメンバーはだいたい「骨」が好きです."骨の伊藤" の下に集結しているのですから当然と言えば当然ですね.そういうメンバーが諸般の事情で外向きのウェブサイトを作るということになったわけですが,折角なので骨に興味がない人にも向けた話もしましょうかね…というのがこの記事の趣旨です.
脊椎動物の骨格標本というのは,確かに,どこのご家庭にも一つや二つくらいあるというものはありませんが,ちょっとお出かけして科学館や自然史博物館を覗いてみれば一つや二つはお目にかかれます.具体的にどこでどんな標本をみることができるかについては,いずれ他のメンバーがここで紹介してくれるでしょう (他力本願).今回は,国立科学博物館の特別展「鳥」(2024/11/1-2025/2/24) で展示されている鳥類の骨格標本を題材にします.
最初のお題は展示の冒頭付近で待ち受けているコハクチョウ (Cygnus columbianus) とコブハクチョウ (Cygnus olor) です.どちらも我孫子市鳥の博物館から出張してきた標本です.
さてこの骨格をどう楽しむかです.最初ですから解剖学的知識は二の次にして,まずは骨格の中にある「カッコいいカタチ」を探します.今回私が見つけたカッコいいカタチは,脇腹部分でした.
次に,どこがどうカッコいいと思ったのか言葉にしてみましょう.自分がカッコいいと思えるカタチや美しいと思えるカタチを見つけられると,そのカタチを作っているモノは何なのかとか,自分が思うカッコいいとは何なのか,という話に繋がっていきます.
私がカッコいいと思ったカタチは,胸から腰までの一連の骨がつくる籠です.細長い骨が均等に並んでとても滑らかな曲面を作っており,その曲面は決して単純なカタチではないものの,乱雑なものでもありません
脇腹の細長い骨は要するに肋骨であり,それらが胸郭を構成しています.肋骨は,背側では椎骨の"横"に関節して,アーチを描き,鳥類の場合には腹側にある胸骨の"横"に関節します.そう思って確認していくと,最も尾側の一本は胸骨に関節していないことに気づきます.この写真には写っていませんが,この骨は椎骨でなく骨盤から分岐しています.これは肋骨でなく 骨盤の恥骨部です (※単離していないので恥骨ではない).そして,このコハクチョウの場合には,恥骨は腹側で閉じており,コブハクチョウとは異なることもわかります.
このように,自分なりの「カッコいい」を見つけることを通じて,焦点を当てる対象が定まり,知識を深めることができます.骨格は,そういう楽しみ方もできます.
この骨の眺め方シリーズでは,ただぼんやりと骨を眺めるのではなく,自分が,何を眺めているのか,なぜそれを眺めたくなっているのかを考えて眺めることを一貫してお勧めしていきます.今回は初級者編,次回は中級者編です.
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