とある日師匠と昼食をとっていた時。
師匠「キミは写真を見てその通りに絵を描けるか?」
巌青「…多分できます」
師匠「キミは写真を見てその色を作れるか?」
巌青「…できると思います」(なになになになに?!?!(恐怖))
というやり取りがあり、何かと思ったらレプリカのリペイントをしてもらいたいとの事でした。
あの時の謎な探り合いを今でも覚えています。
そして渡されたのがイグアノドンの歯とヴェロキラプトルの頭蓋のレプリカ。
イグアノドンの歯(左)、ヴェロキラプトルの頭蓋(右)
師匠のコレクションなので本物から型を取った確かなものです。
しかし…師匠が依頼したのも分かります。ネットで検索すると分かりますが、ペイントが雑でした。モノがいいのでそれっぽく見えますが、ほぼ一色で母岩と化石の部分を塗り分けた感じです。これはいけないと思い師匠から頂いた写真を元にリペイント開始です。
今回はイグアノドンの歯のリペイントを解説します。
絵の具を選ぶ
自分はプラモデルというものをやったことがなく、もっぱら水彩や日本画をやってきました。
なので立体物に色を塗るのはズブの素人です。
レプリカなので触ることも多いため耐久性があり、レプリカの素材に相性が良いものを選ばなくてはいけません。
そして色々と考えた結果、水彩感覚で使える塗料を使うことにしました。
それがこちらです。
ファレホとシタデルカラー
Vallejo(ファレホ)シリーズとCITADEL COLOR(シタデルカラー)シリーズです。
これらを使ってまず母岩(化石がくっついている石)から塗っていきます。
母岩の塗装
母岩の塗装中
途中はこんな感じです。
簡単に塗ったように見えますが、これがまた難しい。写真通りに塗ると言っても陰影で濃くなっている場合もあり、これは岩の色なのか…影だからのこの色なのか…と悩みながら塗っていきます。
そして絵の具そのものの色だと嘘っぽくなるので何色も混ぜた上に日本画で使う本物の土を混ぜて複雑な色を作ります(石の色って300色あんねん状態)。
石ってなんだ…?とゲシュタルト崩壊したのでそこらへんで見つけた似ている石を見ながら地道に塗っていきます。
石自体の色と削ったと思われるところが白っぽくなった色、化石付近が何かの作用で変色した色を意識して塗りました。
歯の塗装
お次は歯の化石本体。上の写真で写っていたと思いますが、最初に光が当たる上面を白で塗ります。
あまり厚く塗りすぎるとディテールが潰れてしまうので慎重に。
2枚目は塗る前(写真は伊藤恵夫師匠より)
亀裂に関しては師匠に「そこまでやらなくてもいい」と言われたのですが、ここは日本画出身の意地で描き切りました。
最後に亀裂に入った土を描いて完成です。
ですが完全にうまく行ったわけではなく、本物の土を入れたことによって母岩のディテールが柔らかくなってしまいました。薄く塗ったつもりでしたが、レプリカの材質が石膏ということもあり後から余分な絵の具を洗い落とせなくなってしまいました。
この失敗を踏まえて次のヴェロキラプトルのレプリカもリペイントしていきたいです。
まとめ
今回のリペイントを通して立体に本物っぽく色をつける難しさと手間が改めて分かりました。博物館に飾ってあるレプリカもこうやって色の複雑さや質感をいかに本物に近くするか苦労しながら作られたと思うと見方が変わってきます。
皆さんも次に博物館へ行ったときには、レプリカの色や塗装に着目してみてください。
皆さんも次に博物館へ行ったときには、レプリカの色や塗装に着目してみてください。
ビフォーアフターが分かりやすくなった!
返信削除リペイントしてもらったイグアノドンの歯のレプリカは、1985年に国立科学博物館で開催された「特別展 イグアノドン」の時に会場内の売店で購入したもの。(39年前!)
返信削除2枚目の写真(左)のケースのラベルには学名が「𝐼𝑔𝑢𝑎𝑛𝑜𝑑𝑜𝑛 𝑚𝑎𝑛𝑡𝑒𝑙𝑙𝑖」、所蔵が「British Museum(N.H)」となっているが、現在は学名は「𝐼𝑔𝑢𝑎𝑛𝑜𝑑𝑜𝑛 sp.」に、所蔵は「The Natural History Museum(ロンドン自然史博物館)」に変更されている。